今回紹介するのは萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」という漫画です。
義父からの性的虐待・同性愛・ドラッグ・貧困などのテーマを扱っています。
結構長いんですが、本当に一つのヒューマンドラマや映画を見ているような気持ちになります。
深く傷ついたジェルミの心が救われるのをぜひ見届けて欲しいです。
ジェルミは母親のサンドラと二人暮らし。
サンドラは資産家の男性と再婚することになる。
しかし母親の再婚相手が変態で、母親のいないところでジェルミに対して肉体関係を強要する悪質な男。
グレッグが変な男だと母親に言っても彼女は信じないし
母親は精神的に不安定な女性で、再婚相手を失うことを恐れてパニック状態になってしまう。
ついに、グレッグはジェルミが性的関係を結ばないならばサンドラと離婚すると脅され
彼はサンドラの幸せな結婚生活を守るためにと彼の要求を受け入れてしまう。
一度受け入れたが最後、再婚相手の男は執拗に関係を強要してくる。
ジェルミは誰にも相談できず、グレッグへの怒りや憎しみに満ちて、どんどん追い込まれていく。
ついに彼は、グレッグを殺害する計画を企て、事件が起きる。
その事件後、彼は深く傷つき自暴自棄になって
男娼をして生活するようになる。
後に彼の心を救うのは義父グレッグの息子であるイアンである。
物語の後半はジェルミが自己肯定感を失って乱暴に過ごしているのを
イアンが彼を取り戻すために彼と向き合い、そして自分の父が何をしたかを解明する展開になります。
この話は同性愛を取り扱っていますが
イアンとジェルミの関係は、同性愛というものだけでくくりきれない
性別など関係なく人として向き合うことの大切さを教えてくれます。
イアンはまっすぐで、太陽のような存在で
ジェルミを見捨てず、彼と向き合うことをやめなかった部分にすごく情熱や愛を感じました。
「残酷な神が支配する」この作品を読んで
一度深く傷ついた心を癒すのは、こんなにも難しい。
何も知らなかった、傷のなかった頃になんて戻れやしない。
受け入れて、新しい幸せを見つけるしかないんだなと思いました。
そして特に萩尾望都さんの登場人物たちの描写が素晴らしいです。
グレッグのような表と裏の顔を持つ人
サンドラのように儚くて幸せなの綿菓子のなかにいるお姫様のような人
ジェルミのように、繊細で、思春期のように自分の中で葛藤をしている人
イアンのようにまっすぐすぎて、不器用で、大事にしたいものを上手に扱えない人
人間味あふれる登場人物たちが魅力です。
とても良い作品なので機会があれば読んで見てください。
それではまた次の記事で会いましょう。