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「頑張れば、いつか報われる。」

私もずっと、その言葉を信じて生きてきました。

勉強して、働いて、資格を取って、新しいことに挑戦して。そうやって努力を積み重ねれば、いつか生活は安定し、自分らしく生きられるようになると信じていました。

でも現実は、そう単純ではありませんでした。

最近、クーリエ・ジャポンの動画シリーズ「ThinkPod」で公開された社会学者・橋本健二さんの「新しい階級社会」というテーマの動画を見て、「ああ、私が感じてきた違和感には名前があったんだ」と腑に落ちました。
非常に面白い内容だったのでぜひ観て欲しいです。

ダイジェスト

  • 階級とは?
  • 生産手段を持っているとは?
  • 階級社会とは?
  • 新しい階級社会の「新しさ」
  • 社会の変化は雇用の問題?
  • 経済的な規範はどう決まる?
  • コロナの影響
  • アンダークラスの特徴
  • 昭和の格差と令和の格差



「昔の非正規」と「今の非正規」はまったく違う

かつての日本では、非正規雇用は人生の一時期だけ経験する働き方という位置づけだった。

例えば、

  • 学生のアルバイト
  • 主婦のパート
  • 定年退職後の嘱託・再雇用

こうした人たちは、本来の生活を支える収入源が別にあることを前提としていた。

  • 学生なら親の支援
  • 主婦なら夫の収入
  • 定年後なら年金や退職金、貯蓄

そのため、非正規労働の賃金は「生活をすべて支える水準」である必要はないと考えられていた。

当時は正社員が社会の中心であり、多くの人が安定した雇用へ移行することを前提に制度が作られていた。また、企業経営者の報酬も現在ほど高額ではなく、所得格差も今より小さかった。


この記事の目次

バブル崩壊後、日本は「新しい階級社会」へ

しかし、バブル崩壊以降、日本の雇用構造は大きく変わった。

学校を卒業しても正社員になれず、そのまま非正規雇用として働き続ける人が増えた。

つまり、非正規雇用が「人生の一時期」ではなく、「人生の大部分」を占める働き方になってしまったのである。

本来は学生や主婦、定年後の人を想定して作られた低賃金の仕組みの中で、現役世代が生活を支えなければならなくなった。

その結果、生活は不安定になり、貯蓄や資産形成も難しくなる。


労働者階級は二つに分かれた

橋本さんは、この変化によって従来の労働者階級が二つに分裂したと説明する。

一方には、正社員として安定した雇用や社会保障を得られる人たち。

もう一方には、非正規雇用を転々とし、低賃金・不安定な雇用の中で暮らす人たち。

橋本さんは後者を「アンダークラス」と呼ぶ。

これは一時的に収入が少ない人ではなく、不安定な雇用と低所得が長期化し、そこから抜け出しにくい構造の中に置かれた人々を指している。

つまり、日本では「労働者階級」が一つではなくなり、安定した層と、不安定なアンダークラスへと分裂したことが、「新しい階級社会」の特徴だというのである。

「格差社会」ではなく「階級社会」

「格差社会」という言葉はよく耳にします。

しかし橋本さんは、今の日本は単に所得に差があるだけではなく、「階級社会」と呼べる状態になっていると説明します。

階級という言葉を聞くと、どこか昔のヨーロッパやマルクス経済学の話のように感じる人もいるかもしれません。

けれど動画では、現在の日本でも、

  • 正社員か非正規雇用か
  • 経営者か雇用される側か
  • 資産を持っているかどうか
  • 雇用が安定しているか

といった条件によって、人の人生や選択肢が大きく左右される現実が、さまざまなデータとともに紹介されていました。

努力だけでは乗り越えられない壁が、社会の構造として存在している。

それが「新しい階級社会」という考え方です。

なぜ「アンダークラス」は増えたのか

橋本健二さんは、「アンダークラス」の拡大は個人の努力不足ではなく、日本の雇用構造そのものが変化した結果だと説明します。

背景には、いくつもの要因があります。

産業構造の変化

かつて日本企業は国内で多くの製品を作り、多くの正社員を雇用していました。

しかしグローバル化が進み、人件費の安い海外へ生産拠点を移す企業が増えました。

国内で必要とされる労働力の質も量も変わり、「正社員を大量に雇い続ける」モデルは維持しにくくなっていきました。

企業は柔軟な雇用を求めるようになった

小売業やサービス業では、季節や曜日、時間帯によって仕事量が大きく変わります。

こうした需要の変動に対応するため、企業は必要な時だけ働いてもらえる非正規雇用を増やしていきました。

企業にとっては、人件費を調整しやすくなるからです。

「非正規は低賃金でよい」という前提が残った

本来、非正規雇用は学生や主婦、定年後の再雇用などを想定した制度でした。

そのため、「生活を支える賃金」である必要はないという考え方が前提にありました。

しかし、その仕組みのまま、現役世代が長期間にわたって非正規で働くようになってしまったのです。

制度は変わらないまま、働く人だけが変わってしまいました。

法制度も非正規雇用を広げた

さらに政府は、労働者派遣法などを段階的に改正し、派遣労働が認められる業務や期間を広げてきました。

企業は以前よりも非正規雇用を活用しやすくなり、派遣社員や契約社員、パート・アルバイトの割合は拡大していきます。

こうした制度変更も、非正規雇用の増加に拍車をかけました。

株主重視の経営への転換

もう一つ大きな変化が、企業経営の考え方です。

かつての日本企業は、「従業員を長く雇用すること」も経営の重要な役割と考える傾向がありました。

しかし近年は、株主への利益還元を重視する経営が強まりました。

利益を増やし、配当を充実させるためには、人件費を抑えることが効果的です。

その結果、正社員を増やすよりも、非正規雇用を活用する経営判断が広がっていきました。


橋本さんが強調しているのは、こうした変化は一つの理由ではなく、

  • グローバル化
  • 産業構造の変化
  • 雇用制度の変化
  • 派遣労働の拡大
  • 株主重視の経営

といった複数の要因が重なり合って生まれたものだという点です。

つまり、「アンダークラス」の拡大は個人の選択の問題ではなく、日本社会の雇用システムが長年かけて変化してきた結果として理解する必要がある、というのが橋本健二さんの主張です。

  • 昔は、企業の利益が増えると、賃上げや終身雇用などで労働者にも比較的還元されることが多かった。
  • しかし1990年代後半から2000年代にかけて、グローバル化や金融市場の影響が強まり、「株主価値を最大化する経営」が重視されるようになった。
  • その結果、利益が出ても賃金よりも配当や自社株買い、内部留保などに回る割合が大きくなり、資本家階級と労働者階級の格差が広がった
  • 法律だけで決まるわけではない。
  • 経済学の考え方、企業経営の常識、投資家の期待、政府の政策、経済団体の方針などが積み重なって、「利益はまず株主に返すもの」という規範が形成されてきた。
  • つまり歴史的・社会的につくられた「常識」であり、不変のルールではない。

日本では、特に2000年前後から成果主義や株主重視経営が広がり、この流れが強まったとされます。

格差は能力だけで生まれたのではなく、企業の利益を誰に分配するかという社会のルールや価値観が変化した結果でもある

「格差が経済全体にどんな影響を与えるか」

① 格差拡大はアメリカから広がった
アメリカでは経営者や創業者が非常に高額な報酬を得るようになった。
他国の経営者も「自分たちももっともらうべきだ」と考えるようになり、その流れが世界に広がった。
日本も欧米ほどではないものの、その方向へ近づいている。
② 富裕層にお金が集中すると消費が弱くなる

先生の主張は、

年収数億円、数十億円の人は、収入を全部使い切れない。
余ったお金は貯蓄や資産運用に回る。
一方、低所得層は収入のほとんどを生活費として消費する。
そのため低所得層の所得が減ると、社会全体の消費が落ち込む。

つまり、

お金持ちに1万円渡すより、生活が苦しい人に1万円渡したほうが、そのお金はすぐ消費され、経済が回りやすい

という考え方です。

③ 日本の長期停滞の原因

先生は、

「ここ20年ほど日本で賃金が上がらなかった大きな理由は、格差拡大にある」

という見方を示しています。

つまり、

労働者への賃金が増えない
消費が伸びない
企業も売れない
景気が回復しない

という悪循環が続いた、という説明です。

④ 「物神崇拝」という言葉

ここで出てくる「物神崇拝(ぶっしんすうはい)」は、もともとカール・マルクスの理論に由来する言葉です。

先生はこの言葉を使って、

お金を集めること自体が目的になってしまう。
必要以上に富を蓄積しようとする。
お金は権力にもつながるため、さらに欲しくなる。

という心理を説明しています。

私自身の人生とも重なった

私はこれまで、本当にいろいろな働き方を経験してきました。

ホテルの受付、ECサイト運営、派遣社員、契約社員、水商売、そして現在は鍼灸師。

働く場所は変わっても、「不安定さ」はいつも隣にありました。

契約が更新されるか分からない。

時給が少し上がるだけで生活が大きく変わる。

病気になれば収入が止まる。

一生懸命働いているのに、「頑張りが足りない」と言われてしまう。

そんな経験を重ねるたびに、「私の努力が足りないのかな」と自分を責めることもありました。

もちろん、自分に改善できることはあります。

勉強も必要ですし、技術を磨く努力も欠かせません。

でも、それだけでは説明できない苦しさも確かにありました。

この動画は、その感覚を「気のせいではなかった」と教えてくれたように思います。

コロナ禍が新しい階級社会をより鮮明にした

1. コロナで最も影響を受けたのは誰か

先生は影響を受けた順番を次のように説明しています。

  1. 自営業者
    • 飲食店、小売店などは営業自粛で売上が激減。
    • 補助金があっても、多くの事業者は収入が大きく減少した。
  2. アンダークラス(非正規労働者など)
    • アルバイト・パートは働けなければ賃金も出ない。
    • 正社員は休業でも給与が支払われる場合が多かったが、非正規はその恩恵を受けにくかった。
    • 自営業者が営業を縮小すると、そこで働く非正規労働者も仕事を失いやすかった。

つまり、

自営業者の打撃が、そのままアンダークラスにも波及した

という構造です。

2. アンダークラスの特徴

先生が挙げている特徴は次のとおりです。

  • 平均年収:約216万円
  • 正規労働者階級:約486万円
  • 正規労働者の4割程度の所得水準

さらに、

  • 貧困率:約37.2%
    • 約3人に1人以上が「貧困線」を下回る生活をしている。
  • 未婚率(59歳以下):約69.2%
    • 約7割が結婚経験がない。

また、

  • 結婚していた人の中には、離婚や死別などをきっかけに非正規雇用となり、アンダークラスに入った女性も少なくないと説明しています。

3. 「貧困率」とは?

ここでいう貧困率は、

国全体の所得の中央値を基準に、その半分未満の所得しかない人の割合

を指します。これは一般に相対的貧困率と呼ばれる指標です。

つまり、

  • 「明日食べるものがない」という絶対的な貧困だけではなく、
  • その社会で標準的な生活を送ることが難しい所得水準にある人の割合

を表しています。

非正規雇用が増えたこと
所得が低いこと
結婚や子育てが難しくなること
コロナのような危機で特に打撃を受けやすいこと

これらが重なって、「アンダークラス」という新しい階級が社会に定着してしまった。

5つの階級の間の格差

項目 資本家階級 新中間階級 正規労働者階級 アンダークラス パート主婦 旧中間階級
人数・構成比250万人
3.9%
2,051万人
32.1%
1,753万人
27.4%
890万人
13.9%
788万人
12.3%
658万人
10.3%
平均年齢51.7歳42.6歳40.6歳41.2歳48.7歳51.6歳
個人年収983万円567万円486万円216万円135万円411万円
世帯年収1,199万円819万円675万円379万円690万円669万円
総資産額6,335万円2,318万円1,385万円720万円1,991万円3,769万円
貧困率5.5%4.9%7.6%37.2%12.6%18.4%
未婚率18.6%33.4%34.6%69.2%31.6%

※人数・構成比は「2022年就業構造基本調査」、その他は「2022年三大都市圏調査データ」より算出。
※橋本健二氏の階級分類に基づくデータ。パート主婦は参考項目。

アンダークラスは約890万人

橋本さんの分析では、日本には約890万人、就業者の13.9%を占める「アンダークラス」が存在します。

平均個人年収は216万円。

正規労働者階級の486万円と比べると半分以下です。

さらに、

  • 貧困率は37.2%
  • 未婚率は69.2%

という数字も示されています。

単に「収入が低い人」という話ではなく、結婚や子育て、資産形成までも難しくなる構造が見えてきます。

昔にも貧困はあった。でも今とは違う

「昭和にも貧しい人はいたじゃないか」

そう思う人もいるかもしれません。

橋本さんは、そこには大きな違いがあると言います。

戦前から昭和前期には、小作人や人力車夫、行商人など、生活が苦しい人々は存在しました。

しかし彼らは、形の上では自営業者でした。

高度経済成長期になると、工場や企業が大量に人を雇うようになり、多くの人は正社員として働けるようになります。

つまり、「安定した雇用」が社会の中心になったのです。

ところが、バブル崩壊後、日本では非正規雇用が急速に増加しました。

その結果、

労働者階級の中から、安定した雇用を持てない新しい階級──アンダークラスが形成された。

これが橋本さんの主張です。

格差は消費にも影響する

講義の中で印象的だったのは、「格差は景気にも影響する」という話でした。

収入が高い人は、すべてのお金を消費するわけではありません。

一方で、生活に余裕のない人ほど、収入のほとんどを日々の生活費として使います。

つまり、低所得層の所得が減れば、社会全体の消費も落ち込みます。

橋本さんは、日本で長年賃金が伸び悩んできた背景には、こうした格差の拡大もあるのではないかと考えています。

コロナ禍で見えた現実

コロナ禍では、自営業者が営業自粛によって大きな打撃を受けました。

そして、その店舗で働くアルバイトやパートなどの非正規労働者も、仕事を失いやすい立場に置かれました。

危機が起きたとき、最も影響を受けやすいのは誰なのか。

コロナは、その現実を私たちに突きつけた出来事でもありました。

私が考えたこと

私はこれまで、派遣社員や契約社員として働いた経験があります。

「頑張ればなんとかなる」と思いながら働いていても、正社員との待遇差や将来への不安を感じる場面は少なくありませんでした。

だからこそ、この講義で語られていた内容は、「努力不足」の話ではなく、社会の仕組みそのものを見つめる視点なのだと感じました。

もちろん、この分析にはさまざまな議論があります。

けれど、「なぜ非正規雇用が増えたのか」「なぜ結婚や子育てが難しくなったのか」「なぜ格差が広がったのか」を考えるきっかけとして、とても示唆に富んだ内容でした。

社会の問題を個人の責任だけで片づけるのではなく、社会構造そのものを見つめ直すこと。

それが、これからの日本を考える上で大切なのではないかと思います。

格差縮小のためには

  • 階級間の移動の変化
  • 格差が生まれると対立が生まれやすい
  • 格差の政治への影響
  • 格差を縮小する方法は?
  • 階級を通すと見えてくるもの

格差は、お金だけの問題ではない

橋本さんは、格差の拡大は単に「収入が違う」という問題ではないと指摘します。

格差が大きくなりすぎると、人々の間にあった連帯感が失われ、「同じ社会で暮らす仲間」という感覚が薄れてしまうというのです。

講義では、

「自分は年収100万円なのに、隣には何億円も稼ぐ人がいる。そんな社会では、人を自分と同じ人間だと思えなくなることもある」

という趣旨の話がありました。

もちろん、格差があるから必ず犯罪が増えるという意味ではありません。しかし、社会学では格差の拡大と犯罪率、社会的不信の高まりには一定の関連があることが、多くの研究で指摘されています。

また、お金のある人の意見ばかりが政治に反映されるようになると、「政治は自分たちのために動いてくれない」という不信感も生まれやすくなります。

橋本さんは、格差の縮小は経済政策だけではなく、社会全体の信頼や民主主義を守るためにも重要だと考えています。

階級は親から子へ受け継がれやすい

橋本さんはもう一つ、階級は世代を超えて再生産されるとも説明しています。

例えば、中小企業の経営者や農家、自営業者は、会社や土地、お店を子どもへ引き継ぐことができます。

一方、新中間階級(専門職や管理職)は、会社を引き継ぐことはできません。

しかし、

教育にお金をかけられる
大学進学を支援できる
勉強する環境を整えられる

といった条件がそろっているため、子どもも専門職や管理職になりやすい傾向があります。

逆に、労働者階級では教育費の負担が重く、大学進学を諦めざるを得ないケースも少なくありません。

その結果、

親の階級が、子どもの将来にも影響しやすい。

これを社会学では「階級の再生産」と呼びます。

格差が広がるほど、階級も固定化していく

橋本さんは、近年は格差そのものが拡大したことで、階級の固定化も進んでいると指摘します。

つまり、

豊かな家庭の子どもは、豊かな階級へ進みやすい。
経済的に厳しい家庭の子どもは、同じような状況から抜け出しにくい。

「努力すれば誰でも同じスタートラインに立てる」というよりも、生まれ育った環境が人生に与える影響が以前より大きくなっているのではないか、という問題提起です。

格差はいつから広がり始めたのか

「日本の格差は最近始まったものではない。」

橋本健二さんは、戦後から現在までの所得格差の推移を示しながら、その変化を説明しています。

戦後〜1960年:格差は拡大

終戦直後は経済の混乱もあり、所得格差は拡大していきました。

1960〜1975年:高度経済成長で格差は縮小

高度経済成長期になると企業は人手不足になり、多くの人が正社員として働けるようになります。

人材の奪い合いが起こり、大企業だけでなく中小企業の賃金も上昇しました。

その結果、日本は格差が縮小する時代を迎えます。

1980年以降:再び格差が拡大

ところが1980年前後を境に流れは変わります。

橋本さんは、

約45年間にわたって格差拡大が続いている

と説明しています。

教育格差は親の所得格差から生まれる

格差が広がれば、親の経済力にも差が生まれます。

すると、

  • 大学へ進学できる家庭
  • 進学を諦めざるを得ない家庭

という違いも大きくなります。

近年、「親ガチャ」という言葉が話題になりましたが、橋本さんはこれを教育機会の格差という視点から捉えています。

大卒の親は、自分と同じように子どもにも大学へ進学してほしいと考え、そのための費用を負担できる可能性が高い。

一方、経済的に余裕のない家庭では、進学そのものが難しくなる場合があります。

親の経済力が、子どもの将来の選択肢にも影響を与えやすくなっているというわけです。


昔は「独立」という上昇ルートがあった

橋本さんが興味深い指摘をしていたのは、階級を上がる道そのものが狭くなっているという点です。

高度経済成長期には、

  • 工場で働いた人が独立して町工場を開く
  • 料理人が自分の店を持つ
  • サラリーマンが会社を興す

といったケースが比較的多くありました。

景気が良く、事業を始めても成功する可能性が高かった時代だったからです。


今は独立のハードルが高くなった

一方で現在は、

  • 市場競争が激しい
  • 初期投資が大きい
  • 技術革新によって設備投資が高額化している

などの理由から、独立・起業そのものの難易度が上がっています。

つまり、

労働者階級から資本家階級へ移動するチャンスが、昔より少なくなっている

というのが橋本さんの分析です。


私が感じたこと

「努力すれば成功できる」という考え方は、今でも大切だと思います。

一方で、「努力できる環境」や「挑戦できる機会」が家庭環境や経済状況によって左右される現実もあります。

橋本さんの話を聞いていて印象に残ったのは、個人の能力だけでは説明できない社会構造の変化に目を向けることの大切さでした。

努力を否定するのではなく、「努力しやすい社会とは何か」を考えることも、これからの日本には必要なのかもしれません。

格差は「お金」だけの問題ではない

格差が広がると、収入の差だけではなく、人と人との距離も広がっていきます。

橋本健二さんは、豊かな人と貧しい人の生活が大きく離れてしまうと、お互いの暮らしを理解することが難しくなり、社会の連帯感が失われていくと指摘しています。

経済的な格差が大きくなるほど、

  • 相手の立場を理解しにくくなる
  • 「同じ社会で暮らす仲間」という感覚が薄れる
  • 人と人との信頼関係が弱まる

という変化が起こりやすくなるというのです。

格差と健康・犯罪の関係

講義では、格差の拡大は健康や犯罪にも影響を及ぼす可能性があると紹介されていました。

橋本さんによれば、格差が大きい社会ではストレスが蓄積しやすく、その結果として健康状態が悪化し、死亡率が高くなる傾向があるといいます。

また、犯罪についても、多くの研究で格差が大きい社会ほど犯罪率が高くなる傾向が報告されていると説明していました。

もちろん、「格差があるから犯罪が起きる」と単純に言えるわけではありません。 犯罪にはさまざまな要因があります。

一方で、経済格差や社会的排除が犯罪発生率と関連することは、多くの社会学・公衆衛生学の研究で検討されているテーマです。

「信頼できる社会」は格差と関係するのか

特に興味深かったのは、「社会的信頼」の話です。

橋本さんは、

格差の大きい地域ほど、人を信頼する人の割合が低い傾向がある

という研究結果を紹介していました。

これは世界共通の質問、

「あなたは一般的に、人は信頼できると思いますか?」

というアンケートを使った国際比較でも見られる傾向だそうです。

日本国内でも、格差の大きい自治体ほど社会的信頼が低いという研究があると紹介されていました。

つまり、

格差が広がることは、お金の問題だけではなく、「人を信頼できる社会」を維持できるかという問題でもあるということです。

私が考えたこと

この話を聞いて、「格差」は単に年収や資産の差ではないのだと改めて感じました。

社会の中で「自分もこの社会の一員だ」と思えること。

困ったときに助け合えると思えること。

そうした信頼や連帯感そのものが、社会を支える土台なのかもしれません。

だからこそ、格差の問題は経済政策だけではなく、「どんな社会を目指したいのか」という価値観にもつながるテーマなのだと感じました。

格差は政治にも影響を与えるのか

「格差と政治」の話でした。

橋本健二さんは、政治の役割を次のように説明します。

政府は税金などを通じて社会全体から富を集め、それを必要な人や分野へ配分することで、社会を安定させる役割を持つ。

例えば、

子育て支援
教育
医療
社会保障
新しい産業への投資

なども、その一つです。

格差が広がると、政治参加にも差が生まれる

橋本さんが興味深いと指摘したのは、経済格差は「政治への参加」にも影響するという点です。

一般的に、

  • 所得や学歴が高い人ほど政治への関心が高い
  • 選挙へ行く割合も高い
  • 政治情報にも触れやすい

一方で、

  • 生活に余裕がない人ほど政治に関心を持ちにくい
  • 投票率も低くなりやすい

という傾向があると紹介されました。

その結果、

政治家は投票してくれる人の意見を重視しやすくなり、政治の重心もそちらへ傾きやすくなる。

これが橋本さんの考えです。

「新自由主義右翼」という分析

格差の政治への影響

5つのクラスターの特徴

項目 リベラル 伝統保守 平和主義者 無関心層 新自由主義右翼
貧困になったのは努力しなかったからだ 17.3% 29.6% 25.3% 20.0% 48.3%
チャンスが平等に与えられるなら、競争で貧富の差がついても仕方がない 39.5% 57.2% 44.2% 38.8% 73.1%
今後、日本で格差が広がってもかまわない 8.6% 19.8% 15.4% 19.1% 36.5%
日本は原子力発電所をゼロにすべきだ 35.3% 18.0% 18.6% 10.3% 9.3%
戦争は人間の本能によるものだから、なくすことはできない 18.6% 37.7% 15.9% 18.2% 41.0%
同性愛は好ましいことではない 7.2% 16.2% 5.8% 5.7% 20.3%

※2022年三大都市圏調査データより算出。
※a・b・cは「とてもそう思う」「ややそう思う」の合計、d・e・fは「そう思う」の比率。

橋本さんは2022年の調査をもとに、人々の政治意識を分析しています。

分析では、

  • 憲法改正・安全保障
  • 所得再分配への賛否
  • 外国人に対する考え方

という3つの軸から、有権者を分類しました。

その中で橋本さんは、

新自由主義右翼

というグループを設定しています。

このグループは、

  • 憲法改正に賛成
  • 所得再分配には消極的
  • 排外主義的傾向が比較的強い

という特徴を持ち、

さらに、

  • 男性が多い
  • 高所得
  • 高学歴
  • 投票率が高い

という傾向が見られたと紹介されました。

橋本さんは、この層が近年の保守政治を支える重要な支持層の一つになっていると分析しています。

最低賃金や社会保障をめぐる議論

講義では、最低賃金や社会保障制度についても触れられていました。

橋本さんは、政権交代や政策変更によって、最低賃金の目標や社会保障改革の方向性が変化していることを例に挙げ、「政治によって格差を縮小することも、逆に拡大させることもあり得る」と説明しています。

私が感じたこと

この講義を通して感じたのは、

格差は経済だけの問題ではなく、政治や民主主義のあり方にも関わるテーマだということです。

一方で、どのような政策が格差を縮小し、経済成長にもつながるのかについては、さまざまな立場や考え方があります。

だからこそ、特定の政党や人物だけを見るのではなく、

データを見る
複数の意見を知る
自分なりに考える

そうした姿勢が大切なのではないかと感じました。

格差は縮小できるのか

講義の最後では、「格差を縮小することは可能なのか」という問いが投げかけられました。

橋本健二さんは、日本ではすでに格差縮小を望む人が多数派になっていると分析しています。

2022年の調査では、

「日本の所得格差は大きすぎる」と考える人は約7割。

野党支持者では約8割、自民党支持者でも約6割が、現在の格差は大きすぎると回答したそうです。

橋本さんは、この結果から、

「格差を縮小する必要がある」という社会的合意は、すでに形成されつつある

と考えています。

格差が広がることで起こること

橋本さんは、格差拡大にはさまざまな社会的影響があると指摘します。

消費が落ち込み、経済が停滞する
健康格差が広がる
犯罪が増えやすくなる
非正規雇用の拡大によって結婚や子育てが難しくなる
少子化が進む

こうした影響を社会全体で理解することが、格差縮小への合意につながるのではないかというのが橋本さんの考えです。

保守と格差縮小は両立しないのか

講義では興味深い指摘もありました。

橋本さんは、自民党支持層を一つではなく複数のグループに分けて分析しています。

その中には、

憲法改正などには賛成
一方で所得再分配や格差縮小には積極的

という「伝統保守」と呼ぶグループも存在すると説明しています。

橋本さんは、

保守と格差縮小は必ずしも対立するものではない

と考えており、幅広い立場の人が格差縮小で合意できる可能性があると述べていました。

伝統保守の人々は、

  • 憲法改正などの保守的な政策には賛成する。
  • 一方で、所得再分配や格差縮小には前向きである。

という特徴を持っているといいます。

橋本さんは、この点に日本政治の可能性を見ています。

もし、格差是正を重視する新しい政治勢力が、こうした伝統保守層からも支持を得られるようになれば、従来の野党支持層と合わせて、格差縮小を求める幅広い政治的な連携が生まれる可能性があるというのです。

その結果、格差是正を重視する政策が実現しやすくなり、日本の政治の流れを変えることも不可能ではない、と橋本さんは述べています。

階級という「レンズ」で社会を見る

最後に司会者から、

「階級という視点で社会を見ると、何が見えてきますか?」

という質問がありました。

橋本さんは、

仕事や収入だけではなく、

教育
生活様式
文化
将来の選択肢

まで、階級によって違いが現れると話します。

その中でも、現在もっとも大きな違いとして挙げたのが教育でした。

新中間階級では、

「子どもが大学へ進学すること」が当たり前になっています。

一方、経済的な事情などから大学進学が難しい家庭もあります。

つまり、

親の経済状況や階級が、子どもの教育機会に影響し、そのことが次の世代の階級にもつながっていく。

これが橋本さんのいう「階級の再生産」です。

階級という「レンズ」で社会を見る

橋本健二さんは、階級という視点で社会を見ると、教育をめぐる格差が最もはっきり見えてくると語っていました。

現在の日本では、大きく分けて次のような違いがあるといいます。

  • 子どもを大学へ進学させることが当たり前と考え、実際に進学させられる家庭
  • 大学進学を必ずしも前提とせず、進学しない選択をする家庭
  • そして、経済的な事情などから、そもそも子どもを持つこと自体が難しい人たち

橋本さんは、こうした違いが、現代日本における最も大きな「分断」の一つではないかと指摘します。

さらに、この教育への意識は、子どもの進学だけでなく、

  • 読書をする習慣
  • 美術館や博物館へ行く習慣
  • 日常の文化的な経験

にもつながっていくといいます。

つまり、教育は単なる学歴の問題ではなく、生活様式や文化、次の世代の選択肢にまで影響を与えるということです。

私が感じたこと

この講義を通して感じたのは、「格差」は単に収入の差ではなく、教育、健康、政治参加、そして次の世代の人生まで影響を与える社会構造だということでした。

橋本さんの分析や提案には、賛否やさまざまな議論があるでしょう。

しかし、「努力不足」という一言で片づけるのではなく、社会の仕組みをデータから考えてみることは、とても大切だと感じます。

私自身も非正規雇用で働いた経験があり、努力だけでは越えられない壁を感じたことがあります。

だからこそ、この講義は「誰かを責めるため」ではなく、どうすればもっと多くの人が安心して働き、暮らせる社会になるのかを考えるきっかけになりました。


自己責任だけでは説明できない社会

私は「努力は意味がない」と言いたいわけではありません。

努力は大切です。

私自身、鍼灸師の資格を取得し、新しい仕事にも挑戦し、ブログやラジオで発信を続けています。

努力は、自分の可能性を広げてくれるものです。

でも一方で、努力だけでは変えられない社会の仕組みもあります。

働く環境。

雇用の制度。

教育を受けられる機会。

生まれ育った家庭。

地域による格差。

こうした条件は、一人ひとりの人生に大きな影響を与えています。

だからこそ、「うまくいかないのは全部あなたの責任だ」という考え方には、私は違和感を覚えます。

社会を知ることは、言い訳を探すことではありません。

現実を正しく理解することです。

「事務職」は中間層からアンダークラスへ近づく可能性がある

橋本健二さんは、社会学では労働者階級をさらに細かく分類して考えると説明していました。

例えば事務職は、管理職ほどの権限は持たないものの、現場労働とも少し異なる「中間的な立場」とされてきました。

高度経済成長期から平成にかけては、企業で事務職として働くことは比較的安定した仕事であり、中流階級を支える職業の一つでした。

しかし、その状況は大きく変わりつつあります。

定型的なデータ入力や書類作成、スケジュール管理などの業務は、すでに派遣社員や契約社員へ置き換えられてきました。

さらに近年では、RPA(業務自動化)や生成AIの発展によって、多くの事務作業そのものをコンピューターが担えるようになっています。

つまり、「人がやる必要のある事務仕事」が少しずつ減っているのです。

その結果、企業は事務職を正社員として雇う必要性が薄れ、より低コストな雇用形態や自動化へ移行する動きが加速しています。

これは、事務職という職業全体の社会的な地位や賃金が下がる可能性を意味します。

私自身も長年ECサイト運営や事務系の仕事に携わってきましたが、AIを使うようになって実感することがあります。

以前なら数時間かかっていた文章作成やデータ整理、問い合わせ対応の下書きが、今では数分で終わることも珍しくありません。

もちろん、人にしかできない判断や調整、コミュニケーションは残ります。

しかし、「決まった手順を正確にこなす仕事」だけでは、今後価値を維持することは難しくなっていくでしょう。

だからこそ、これからの時代は単なる事務処理能力だけではなく、

  • 課題を見つける力
  • 人と調整する力
  • 専門知識
  • AIを使いこなす力
  • 新しい価値を生み出す力

といった能力が、これまで以上に重要になるのだと感じています。

社会を知ることは、生きるための武器になる

私は昔、「なんでこんなに生きるのが苦しいんだろう」と泣いていた時期がありました。

非正規雇用で将来が見えず、生活に余裕もなく、「私だけがダメなんだ」と思い込んでいたこともあります。

でも社会のことを少しずつ学ぶようになってから、「個人の問題」と思っていたことの一部は、「社会全体の問題」でもあることを知りました。

それは誰かのせいにするためではありません。

自分だけを責め続けなくて済むようになるためです。

そして、どうすればより良い社会になるのかを考えるためです。

昔の私が知りたかったことを、今の誰かへ

私がブログを書き続ける理由は、とてもシンプルです。

昔、生き方に迷って泣いていた私が、泣かなくても済むように。

そして、今どこかで同じように苦しんでいる誰かが、「私だけじゃなかったんだ」と思えるきっかけを届けたいからです。

社会問題は難しく感じるかもしれません。

でも、それは私たちの日々の暮らしや働き方と、決して無関係ではありません。

「新しい階級社会」という言葉を知ることは、日本社会を悲観するためではなく、自分たちの暮らしをより深く理解するための入り口なのだと思います。

だから私は、これからも政治や経済、働き方や社会の仕組みを、一人の働く女性として、自分の言葉で発信し続けたいと思います。

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