花が咲く悪夢──『サイレントヒルf』が描く、静かな狂気の日本
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沈黙の街が、今度は日本にやってくる。
ホラーゲームの金字塔『SILENT HILL』シリーズ最新作──『サイレントヒル f』は、1960年代の日本を舞台にした完全新作だ。

少女が花に覆われ、やがて肉体を失い、花そのものへと変わっていく光景。
血と花びらが混ざり合うような幻想的な恐怖に、心の奥がざわつく。
まるで「腐敗」と「再生」を同時に見せつけられているような感覚だった。

「美しいがゆえに、おぞましい。」 山々に囲まれた日本の田舎町・戎ヶ丘に住む主人公の高校生・深水雛子(しみず ひなこ)。 彼女の日常は、謎の白い「バケモノ」によって突如崩れ去った。 変り果てた見慣れた町を探索し、戦い、謎を解きながら、やがて彼女はある「結末」にたどり着く。 登場人物が持つ悩みや葛藤、トラウマをきっかけに引き起こされる、心理的恐怖が特徴のサイコロジカルホラー「SILENT HILL」シリーズの最新作。

従来の作品から一転、日本を舞台とした新たな“サイコロジカルホラー”が始まる。

この記事の目次

■ 物語を“選ぶ”という体験──『かまいたちの夜』の記憶

私が『サイレントヒル f』を観たときに思い出したのは、子どもの頃に夢中になったサウンドノベル『かまいたちの夜』。

この作品は、主人公の選択によって物語の結末が変わるシステムが特徴で、プレイヤーの判断がストーリーを開いていく。
その緊張感と没入感。
「自分の選択で運命が変わる」という感覚が、『サイレントヒル f』にも通じているように感じた。

本作もまた、プレイヤーの行動や選択によって異なるエンディングを迎えるマルチエンディング形式を採用している。
まるで自分の“罪”や“感情”が物語に反映されるような、心理的なホラー体験だ。


■ マルチエンディングの中の一編──「狐の嫁入り」

その中でも特に印象に残ったのが、「狐の嫁入り」と呼ばれるエンディングだ。
一見、幸せな結末のように見える。
だが物語の終盤、主人公が女として抱える毒や叫びを残すような形で幕を閉じる。

それは、“結婚=幸せ”という古い価値観に対する静かな反逆だった。
女性が男性の家に嫁ぐという、かつての日本的な婚姻の意味を、
ゲームの中では儀式的・象徴的なホラー演出として描いている。

私はこのエンディングを“秀逸”だと思った。
女性にとっての「幸せ」とは何か。
「誰かの所有物になること」ではなく、「自分の感情をどう生きるか」を問うような物語になっている。

■ プレイできなくても“観る”ことで味わえる

正直に言えば、私はホラーが苦手で、実際にプレイすることはできなかった。
けれど、配信動画を観ることで作品の世界観を深く感じることができた。

映画のように観るサイレントヒルf──
その静かな映像美と、じわじわと心に侵食してくる物語性。
観るだけでも、十分に“文学的ホラー”として成立していると思う。

また、精神科医の名越康文先生が配信している「一緒に診るシリーズ」もおすすめだ。
明るい語り口で作品の心理面を解説しつつ、宗教民俗学の観点からも世界観を読み解いてくれる。
作品を怖がらず、文化・心理・宗教的な視点で学べるホラー体験になる。

EIKO(狩野英孝)さんの実況ぷれいはホラー感をだいぶ薄くしてくれるのでおすすめ。

ホラー耐性が低い方はこちらもぜひ。

■ “花咲く死”と“内側の叫び”

『サイレントヒル f』の中で繰り返し描かれるのは、花が咲く=死の象徴
それは単なる恐怖ではなく、「生の執着」「女性の苦しみ」「個が社会に溶けていく運命」を詩的に表しているように見える。

女性の身体や心が社会的儀式の中で侵食される。
その描写はあまりに痛ましく、それでいて美しい。
“恐怖の中に美を見出す”──この作品の根底には、そんな逆説的な美学が流れている。


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■ 恐怖は内側から咲く

『サイレントヒル f』は、単なるホラーではなく、
人間の心の奥にある“叫び”と“祈り”を描いた物語だと思う。

花が咲く。
命が散る。
そしてまた、何かが芽吹く。

恐怖はいつも、外からやってくるものではなく、
私たちの内側で静かに息づいているのかもしれない。

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