2026年 · 読了時間:約6分
「戦争になったら全部国に取られる」——そんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。少し大げさに聞こえるかもしれません。でも実際には、大規模な有事が起きたとき、私たちの生活やお金にはさまざまなリスクが生まれます。
難しい話に聞こえますが、要は「給料は変わらないのに、生活費だけじわじわ上がっていく」という、かなり身近な問題です。
この記事の目次
① 物価が上がる——一番リアルなリスク
戦争や紛争が起きると、まず動くのは物価です。これは「可能性」の話ではなく、すでに起きたことです。2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、日本の食卓と家計に具体的な影響が出ました。
実際に値上がりした品目
ロシアとウクライナは世界の小麦輸出量の約3割を占める主要産地です。日本はウクライナから直接輸入していませんが、国際市場全体で価格が上がると、米国・カナダ・オーストラリアからの輸入小麦も連動して値上がりします。さらに2022年の急激な円安がこれに追い打ちをかけました。
② 仕事・雇用・給与への影響
有事のとき、家計への打撃として見落とされがちなのが「景気悪化の連鎖」です。ミサイルが飛んでこなくても、雇用はじわじわと削られていきます。
「うちの会社は大丈夫」が崩れるとき
直接的な被害がなくても、企業の業績は悪化します。輸出が止まる、原材料費が高騰する、消費者の財布が固まる——こうした波は、業種を問わず広がっていきます。「うちの業界は関係ない」と思っていた会社が、気づいたら採用を凍結していた、という話は珍しくありません。
しわ寄せが来る順番
働き盛りの正社員であっても、残業代が月3〜5万円減るだけで生活への影響は小さくありません。住宅ローン、子育て費用、老後の積み立て——収入の変化は、それらすべてに連鎖します。
「安定職種」も例外ではない
公務員や医療・福祉職は比較的安定していますが、財政悪化による給与抑制や定員削減は起こりえます。また、民間でも「インフラ系は強い」と言われますが、エネルギーコストの上昇で経営が圧迫されるケースもあります。
転職市場はどうなる?
有事・不景気のタイミングでは、転職市場も大きく変わります。求人が絞られ、選べる選択肢が減る。「今の会社を辞めたい」と思っても、外に出るリスクが平時より高くなる——そういう状況になりやすいです。だからこそ、景気が良いうちにスキルを磨いておくことや、社内での評価を積み上げておくことが、リスクヘッジになります。
③ 預金の「価値」が目減りする
預金口座の数字が消えるわけではありません。しかしインフレが進むと、100万円で買えていたものが買えなくなります。お金の量ではなく、お金の力が弱まるイメージです。
④ 税金・社会保険料の増加
国防費が増えると増税の話が出てきますが、それと同じくらい生活に影響するのが「社会保険料の引き上げ」です。給与明細に並ぶ控除項目を「よくわからないもの」として流している人も多いのではないでしょうか。
社会保険料とは何か
社会保険料とは、病気・老後・失業・介護といったリスクに備えるために、毎月の給与から自動的に天引きされる保険料です。会社員の場合、5種類の保険が適用されています。
| 種類 | 何のため? | 負担のしくみ |
|---|---|---|
| 健康保険 | 病院にかかるとき3割負担で済む | 労使折半(会社と半分ずつ) |
| 厚生年金 | 老後の年金の積み立て | 労使折半 |
| 介護保険 | 介護サービスを受けるための備え | 40歳以上に課される・労使折半 |
| 雇用保険 | 失業したときの給付(失業手当) | 大部分は会社負担 |
| 労災保険 | 仕事中のケガや病気への補償 | 全額会社負担 |
月収30万円の会社員が実際に負担する社会保険料は、概算で月3〜4万円程度になります。手取りが20万円台になるのはこれが大きな理由のひとつです。
なぜ有事に上がる可能性があるのか
日本はすでに高齢化による医療費・年金・介護費の増大で、社会保険料の引き上げが続いてきた歴史があります。有事になれば財政はさらに圧迫され、社会保険料の料率引き上げという形で、じわりと手取りを削ってくる可能性があります。「増税」として騒がれにくいぶん、見えにくいコスト増です。
⑤ 保険はどうなる?
「戦争になったら保険金が出ない」は、半分正しくて半分誤解です。火災保険・生命保険・傷害保険などには「戦争・武力行使による損害は免責」という条項が含まれることがあります。ただし、すべての保険が一律で支払われないわけではなく、契約内容によります。加入している保険の約款を一度確認しておくと安心です。
⑥ 財産の没収——過去には実際に起きた
「預金も土地も全部取られる」は現在の日本の法制度では直ちには起きません。ただし歴史を振り返ると、終戦後の1946年に日本では預金封鎖と財産税が実施されました。「あり得ない話」とは言い切れない、という認識は持っておいて損はないでしょう。
まとめ——「遠い国の話」ではない
戦争のリスクは、ミサイルや兵隊の話だけではありません。
「給料はそのままなのに、生活費だけ上がっていく」——それが有事における家計への影響の、もっとも現実的な姿かもしれません。難しい思想の話よりも、こういう生活実感のある角度から考えてみることが、最初の一歩になると思います。














