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独身偽装とSNS型ロマンス詐欺のあいだで
最近、独身偽装やSNS型ロマンス詐欺についての記事をいくつか目にした。
どれも「嘘」「騙す」「被害」といった強い言葉で語られている。
独身詐欺は、本当に「誠実」なのか
私は、独身詐欺は罪深い行為だと思っている。
よく聞く言い訳に、
「妻とは別居状態で、愛情の気持ちはもうない」
「形だけの結婚だから、既婚者であることは話さなかった」
というものがある。
けれど、それのどこが誠実なのだろうか。
法律上の婚姻関係が続いている以上、
それは本人の主観にすぎない。
相手が「知ったうえで選ぶ権利」を奪っている時点で、
すでにフェアではない。
本当に誠実であるなら、
「自分は既婚者だが、それでも関係を築きたいと思っている」
と、最初に伝えるはずだ。
それをしないのは、
拒否される可能性を避けたいから。
自分が選ばれないかもしれない現実を、
直視したくないからだ。
つまりこれは、
相手の気持ちを思いやっての沈黙ではなく、
自分を守るための隠蔽に近い。
独身詐欺もロマンス詐欺も、
形は違えど共通しているのは
「相手の判断材料を奪う」という点だ。
それは優しさでも配慮でもない。
ただの、都合のいい嘘だと思う。
身近で起きているロマンス詐欺
ロマンス詐欺というと、
「ネットに不慣れな人が騙されるもの」
そんなイメージを持たれがちだ。
けれど最近、私の身近なところで
50代・60代の女性が被害に遭った話を聞いた。
母の友人は、SNSで知り合った男性から投資の話を持ちかけられたという。
最初は実際に利益が出て、「ちゃんと儲かっている」という成功体験もあったそうだ。
だからこそ、回数を重ねるうちに投資額は増え、
気づいたときには被害額もかなり膨らんでいた。
結果として、相当な額の借入までしてしまったという。
その方はいわゆるキャリアウーマンで、
持ち家があり、安定して稼いでいる人だった。
判断力がない人でも、生活が不安定な人でもない。
それでも、引っかかってしまう。
この話を聞いて思ったのは、
「誰が騙されるか」ではなく、
「どんな状況で、人は判断を誤るのか」ということだった。
私自身が感じる、ロマンス詐欺の入り口
私自身も、インスタグラムを運用していると、
海外のイケメン風アカウントからフォローされ、
そこからチャットが始まることがある。
「あなたは素敵だ」
「美しい」
「特別な存在だ」
最初から、かなりストレートな言葉を投げかけられる。
正直なところ、私はこの時点でかなり身構えてしまう。
仕事でSNSを使っていることもあり、
お客様ではない人とのチャットというもの自体に疲れてしまう、というのも大きい。
だから深いやり取りにはならないのだけれど、
返信をしないでいると、
「どうして返事をしてくれないの?」
「僕は本気なのに」
と、執拗にメッセージが届くこともある。
この距離の詰め方に、強い違和感を覚える。
それでも「嬉しくなる気持ち」はわかる
一方で、こうも思う。
もし、日常で
誰かから愛の言葉を向けられる機会が少なかったら。
もし、そんな言葉を言われ慣れていなかったら。
日本人男性は、良くも悪くも
ここまで言葉で感情を表現する文化があまりない。
だからこそ、突然ストレートな言葉を向けられると、
驚きと同時に、嬉しくなってしまう気持ちも理解できる。
「素敵だ」と言われること自体は、やっぱり嬉しい。
それは、とても自然な感情だと思う。
ロマンス詐欺の怖さは、
この“自然な嬉しさ”の入り口に、巧妙に寄り添ってくるところにある。
独身偽装とロマンス詐欺の違いはどこにあるのか
恋愛感情や信頼関係を意図的に作り、
そのあとでお金や人生設計を奪っていく。
「何を奪っているか」
お金、時間、信頼、人生。
回復が難しいものを奪う意図があるなら、
それはもう“ずるさ”ではなく“搾取”だ。
信じるために、疑う
だから私は、
「疑うこと=冷たいこと」
だとは思っていない。
むしろ、
目の前の相手を信じるために、疑う。
違和感を覚えたら、その場を離れていい。
それもまた、
今の時代を生きるための
静かな生存戦略なのだと思う。
誠実さは大事。













