私は、高圧的で不機嫌を撒き散らす人間が苦手だ。
特に、権力を持った立場の人間がこれをやり始めると、
組織全体がその人の“気分”に支配される。
そして皮肉なことに——
「この人こそハラスメント講習が必要だ」と思う人ほど、
自分が学ぶ必要性にまったく気づかない。
なぜそんなことが起きるのか。
私自身の治療家としての経験を交えながら、
改めて整理してみたい。
この記事の目次
実力があれば加害性は免罪される? そんな組織が健全であるはずがない
多くの職場で見てきたのは、
実力がある人ほど人格面の問題を咎められにくいという現実だ。
成果を出しているから多少の横暴は許される、
という空気ができあがってしまうと、
・意見が言えなくなる
・人材が育たない
・離職が増える
・空気がどんどん歪む
という負の連鎖が必ず始まる。
本来、影響力のある人ほど人格面を問われるべきなのに、
現実には逆転現象が起きている。
実力があるからといって加害性が免罪される組織は、
健全ではないし、いずれ静かに壊れていく。
中小・個人経営ほど、ハラスメント構造が固定化しやすい
ハラスメント気質のある人は大手企業にもいる。
しかし、大手には
・相談窓口
・部署異動
・人事制度
・第三者が介入できる仕組み
があるため、時間と労力は必要でも“逃げ道”が残されている。
一方で、中小規模、特に個人経営者のもとでは、
経営者が人事・評価・運営すべてを握っているため、
誰も止められない暴走が起きやすい。
トップが不機嫌なら職場全体が不機嫌になり、
トップがイエスマンを周囲に置けば、
誰も本音を言わなくなる。
「何を言うかではなく、誰が言うか」
それで判断が決まるような環境は、もう健全ではない。
治療家として働いて実感した“業界のリアル”
私は職歴が多い。
でも、そのおかげで業界ごとの空気感を知り、
視野が広がったのは大きな財産だと思っている。
治療家として働き始めて強く感じたのは、
雇用と業務委託では、労働者の守られ方がまったく違うということ。
● 企業で働くことの恩恵
大手で働くと、当たり前のように感じていた
休憩時間、残業代、社会保険、労働時間の管理——
これらすべてが労基法で守られていることを実感した。
● 業務委託では“足元を見られる”リスクが高い
現実には、
・偽装請負のような働かせ方
・業務委託=労働法の対象外と勘違いする経営者
・「自由」ではなく「無防備」にされる働き方
こうした問題は非常に多い。
フリーランスで働く人は、
自分を守る法律を知ることが必須だと痛感した。
今も残る“師弟関係文化”という名の無賃労働構造
治療家業界には、古い師弟関係の文化が残っている。
無給、あるいは最低賃金以下の扱いで
先生の鞄持ちをし、助手として雑務をこなしながら技術を学ぶ——
そんな世界だ。
本気で覚悟を決めて修行するなら、それも選択肢のひとつだと思う。
けれど、
生活費や貯金がなく、社会保険にも入れない状態で
自分をすり減らしながら続けるべきものではない。
独立開業できるとはいえ、
成功が保証されているわけではない。
だから私は、
生活費を確保するライスワークを持ちながら
セラピストとして技術を磨く道が現実的だと感じている。
治療家が身を守るために必要なこと
治療家として働いてきて、
私が“絶対に必要だ”と思うものが二つある。
● 1)情報交換できる第三者の存在
この業界は狭い。
だからこそ、横のつながりが自分を守る。
求人票ではわからないことは多い。
お互いに体験談を共有することで、
変な企業や怪しい求人を避けることができる。
● 2)利益誘導のないメンター
同業で、利害のない立場で助言してくれるメンターの存在は
本当に大きい。
方向性に迷ったとき、
キャリアに悩んだとき、
働き方について判断するとき——
冷静にアドバイスをくれる人がいるだけで
道が見えやすくなる。
私自身も、良い方に出会い、
多くの助言に救われてきた。
結論:権力者の“機嫌”に振り回されない働き方を選ぶ
どんな働き方にもリスクはある。
大手には大手の拘束があり、
中小には中小のハラスメント構造がある。
だからこそ、
仕組みを知り、自分の生活を守りながら、
自分のペースで技術を伸ばしていくことが大切だ。
技術を学んだら辞める。それでいい。むしろ健全だ。
ただ、本当に難しいのはそこまでの「耐久時間」だ。
理不尽や不安定さを飲み込みつつ、
どうにか心を腐らせずにゴールまで辿り着くこと。
技術のために自分の人格や自尊心を犠牲にしてしまったら本末転倒だ。
だからこそ、“逃げ道を確保しながら学ぶ”という戦略が必要になる。
誰かの機嫌で人生を消耗しないこと。
自分の働き方は、自分で選んでいい。
私自身は飽き性の傾向があり、マルチポテンシャライトの考え方が好き。













