
この記事の目次
対面だけに依存しない。
私が考える「治療家として生き続けるための働き方」
私は現在、35歳の鍼灸師として、施術の現場に立ちながら働いている。
学生時代にセラピストとしてアルバイトを始めて約2年。
その後、国家資格である鍼灸師免許を取得し、学校を卒業してから1年。
施術家・セラピストとしてのキャリアは、まもなく3年になる。
鍼灸師としては、鍼術・灸術を用いて、
患者さんの身体に直接触れ、不調や痛み、
日常の中にある「なんとなくのしんどさ」と向き合ってきた。
決してベテランではない。
けれど、これまでの社会人経験も含めて、
現場で働き、生活を回し、将来を現実的に考える段階には入ったと感じている。
また私は、女性治療家でもある。
体力、働き方、ライフステージ、そして時間の有限さ。
20代の頃のように「いつか」ではなく、
「今、何を積み上げるか」を意識するようになった。
社会保険のある仕事を「軸」にするという選択

治療家として生きるなら、独立か開業か。
業界では、そんな二択が当たり前のように語られる。
けれど私は、その空気にずっと違和感を覚えてきた。
現在は、
社会保険に加入しながら働けるホワイトな地元企業を生活の軸に置き、
休日や空いた時間に鍼灸師として施術を行う、
という働き方を選んでいる。
これは妥協でも逃げでもない。
- 社会保険がある
- 収入の見通しが立つ
- 体調を崩しても即座に生活が崩れない
この土台の安定があるからこそ、
目の前の施術や患者さんに、無理なく向き合うことができる。
治療家として長く続けるためには、
まず自分自身の生活と心が守られている必要があると、私は思っている。
自費診療は、どうしても優先度が下がる
鍼灸を含む自費診療は、
社会構造上どうしても後回しにされやすい。
- 命に直結しにくい
- 我慢しようと思えば我慢できる
- 景気や不安心理の影響を受けやすい
これは治療の価値が低いからではない。
社会が不安定になるほど、影響を受けやすい分野だという現実だ。
だからこそ、自費診療でやっていくには、
- 技術
- 人柄
- 信頼
- 発信
- 集客
これらを年単位で積み重ねていく覚悟が必要になる。
対面接触型の仕事が抱えるリスク
鍼灸師に限らず、
人と直接会わなければ成り立たない仕事は、
構造的なリスクを抱えている。
感染症、災害、社会情勢の急変、
そして自分自身の体調不良。
どれか一つが起きるだけで、
仕事が一気に止まる可能性がある。
私は2020年、コロナショックの影響で、
観光地のホテルに勤務していた仕事を失った経験がある。
そのとき強く思った。
「想定外の出来事は、必ずまた起きる」
医療職であっても、
対面を前提とする仕事は例外ではない。
対面だけに依存しない働き方を考えるようになった
この経験から、
私は「対面接触型の仕事だけに依存する働き方」は
やはりリスクが高いと考えるようになった。
だからこそ、
- 鍼灸師という資格
- 東洋医学の知識
- 身体の見立て方
これらを活かして、
直接会わなくても価値を届けられる形も作っていきたいと思っている。
施術は、治療家の価値のすべてではない。
日常生活の整え方、
不調の捉え方、
無理のないセルフケア。
こうした知識や視点は、
文章や音声、オンラインコンテンツとしても届けられる。
業界の外に出て、先輩たちと話すようになった一年
この一年、外部の勉強会やイベントに参加し、
業界の先輩方と直接話す機会が増えた。
学生時代から治療院に勤務し、
現場に身を置く選択はしてきた。
それは確かに良い経験だったと思っている。
ただ、勤務先という利害関係の中だけでは、
見えない現実もある。
利害関係の少ない、
相談に乗ってくれる先輩から聞く、
- 独立してうまくいった話
- 失敗した話
- 生活が不安定だった時期の話
これらは、将来を考えるうえで
とても現実的な指針になった。
これまでの経験を重ねて見えてきたこと
私は30代までに、
- IT・WEBを含む事務経験
- ホテルや飲食などの接客業
- 施術家・鍼灸師としての現場経験
を積んできた。
一見バラバラに見えるこれらの経験は、
今では一本につながっている。
施術技術に加えて、
- 事務能力
- IT・WEBへの理解
- 接客スキル
そして、ここに
経営やお金の知識が加われば、
小さくても自分の裁量で回せるお店は十分に可能なのではないか。
そう考えるようになった。
女性として、35歳の今をどう使うか
私は女性で、未婚でもある。
出産やライフステージについて考えれば、
どうしても時間の制限は現実として存在する。
けれど、「たられば」を考えて立ち止まるよりも、
今できる努力を積み重ねることの方が、
未来の選択肢を増やしてくれると思っている。
今は、自分のキャリアのために努力する時期。
それが、未来の自分を助ける。
35歳になった今、
そう割り切って前に進む方が、
むしろ心は安定している。
自分の船で、早く漕ぎ出したい
業界の先輩から、
「独立資金は早めに貯めて、スモールスタートした方がいい」
というアドバイスをもらった。
大きな船はいらない。
でも、自分で舵を握れる船は、できるだけ早く持ちたい。
誰かの船に乗る安心感もある。
それでも最終的には、
- 自分の判断で
- 自分のスピードで
- 自分の責任で
進める船で海に出たい。
治療家で「あり続ける」ために
治療家として成功することよりも、
私が大切にしたいのは、
治療家であり続けられることだ。
- 生活を守る
- 身体を守る
- 心を守る
その上で、
少しずつ自分の看板を育てていく。
対面だけに依存しない。
一つの働き方に賭けすぎない。
それが、
35歳の私が選びたい、
治療家としての生存戦略だ。













