
公開日:2026年6月 データ出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
この記事の目次
都道府県別・女性の賃金をヒートマップで可視化してみた——「平均値」が隠しているもの
公開日:2026年6月 データ出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
都道府県別の女性賃金を、地図状のヒートマップで可視化するインタラクティブチャートを作成した。
「女性の賃金が低い」という話は何度も聞いてきたし、数字も見てきた。でも、都道府県ごとに並べて色で見せると、知っていたはずのことが、急に「見えてくる」形になる。
それを体験してほしくて、この記事を書いている。
ヒートマップを使ってみてください
下のチャートでは、2つの指標を切り替えて見ることができる。
- 女性平均月収(万円)——フルタイムで働く女性が、毎月「きまって」受け取る現金給与の平均
- 男女賃金比(%)——女性の給与が男性の何%にあたるか。100%に近いほど格差が小さい
セルにカーソルを乗せると、その都道府県の両指標と全国順位が表示される。右上の小さな数字が順位バッジだ。
都道府県別 女性賃金 ヒートマップ
一般労働者・きまって支給する現金給与額(フルタイム) 右上の数字はランキング順位
※ 数値は平均値(加重平均)。高収入層が多い都市部ほど高め、地方ほど実態に近い傾向あり。中央値データは本調査では非公表。
対象:民間企業に雇用される一般労働者(正社員・正職員およびそれ以外)のうち常用労働者。パートタイム労働者は含まない。
「きまって支給する現金給与額」=所定内給与+超過労働給与(税込・現物給与除く)
データについて正直に書いておく
このチャートに使っているのは、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の都道府県別参考表(2026年3月公表)だ。
対象は民間企業に雇用される<一般労働者(フルタイム)>で、パートタイム労働者は含まない。
そして、数値は「平均値(加重平均)」だ。
これは重要な注釈なので、もう少し丁寧に書く。
賃金の「平均」は、高収入の人が少数いるだけで上に引っ張られる。
特に都市部は外資系・大企業・専門職など高収入層が集中しているため、「平均」が実態よりも高く出やすい。
逆に、地方では賃金分布が比較的均一なため、「平均」が実態に近い傾向がある。
本来なら中央値(上から数えて真ん中の人の値)のほうが実態を掴みやすいのだが、賃金構造基本統計調査では都道府県別の中央値は公表されていない。
国税庁の「民間給与実態統計調査」に中央値に近いデータがあるものの、都道府県別の男女分離での取得が難しい。
つまりこのヒートマップは、「東京・神奈川の数字は実態より高めに出ている可能性がある」と読んでほしい。それを踏まえた上で、それでも見えてくることが多い。
データが語ること——3つの構造
1. 「稼げる都市」と「格差が小さい地方」は、別の話だ
月収ランキングの上位は、予想通りの顔ぶれだ。
1位・東京(37.4万円)、2位・神奈川(32.7万円)、3位・大阪(31.8万円)——大都市圏が並ぶ。
ところが、男女賃金比のランキングに切り替えると、順位が大きく入れ替わる。
男女賃金比トップ5(格差が小さい順):
| 順位 | 都道府県 | 賃金比 | 女性月収 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 沖縄 | 83.8% | 26.6万円 |
| 2位 | 鳥取 | 81.6% | 26.4万円 |
| 3位 | 奈良 | 79.2% | 30.3万円 |
| 4位 | 秋田 | 78.7% | 25.4万円 |
| 5位 | 岩手 | 77.8% | 25.6万円 |
沖縄が男女格差最小。でも女性月収は26.6万円で全国40位台だ。
これは矛盾ではない。男性の賃金も低いから、相対的に差が小さいという構造だ。格差が小さいことと、賃金水準が高いことは、全く別の問題なのだ。
一方で東京は賃金比75.8%で、月収ランキング1位なのに格差ランキングでは中位に沈む。高収入の職種・業界が集まる場所ほど、その恩恵が男性に偏りやすいという現実がある。
2. 三重・岐阜・広島——製造業地帯の「見えにくい格差」
男女賃金比ワースト5を見ると、興味深い地域が並ぶ。
男女賃金比ワースト5(格差が大きい順):
| 順位 | 都道府県 | 賃金比 | 女性月収 |
|---|---|---|---|
| 47位 | 三重 | 70.0% | 28.0万円 |
| 46位 | 岐阜 | 71.1% | 26.9万円 |
| 45位 | 静岡 | 71.9% | 27.8万円 |
| 44位 | 広島 | 71.9% | 28.2万円 |
| 43位 | 福井 | 72.1% | 26.5万円 |
三重・岐阜・静岡・広島——製造業が地域経済の基幹を担う県が集中している。
製造業は日本の中でも賃金水準が高い産業の一つで、特に男性の技能職・管理職に手厚い。女性は事務・補助職に偏りやすく、製造現場に配置されにくい構造が残っている。その結果、同じ県内でも男女の賃金差が開きやすい。
「製造業が強い=男性の賃金が高い=男女格差が大きい」という構造は、産業構造と性別役割分業が組み合わさった結果だ。これは個々の企業の意識の問題だけでは語れない。
3. 女性の賃金が上がらない、もう一つの理由——「フルタイム」の外側
このデータにはパートタイム労働者が含まれていない。
日本の女性労働者のうち、パートタイム・有期雇用で働く割合は約54%(厚生労働省「雇用動向調査」)。つまりこのヒートマップは、女性労働者全体の半分弱しか映していない。
パートタイムの平均時給は正規雇用の6〜7割程度で、かつ月の労働時間が短いため、月収換算すると10〜15万円台になることが多い。それを含めると、都道府県別の「女性の実際の賃金」はこのヒートマップよりさらに低くなる。
フルタイムのデータだけ見ても、東京の女性が37.4万円。パートを含めた全女性労働者の平均に引き直すと、おそらく25万円前後まで下がるだろう。
「女性の賃金が低い」という話をするとき、私たちはいつも「どの女性の話をしているのか」を意識しなければならない。
数字の外にあること
データを眺めながら、何度か手が止まった。
26万円、25万円、24万円——
東北や九州の地方都市で、フルタイムで働く女性の月収がこの水準だ。
社会保険料と住民税を引いたら手取りは20万円を切る。
家賃、食費、光熱費。
子どもがいれば教育費。
その中から将来への貯蓄を捻出することが、どれだけ難しいか。
「女性が経済的に自立するのは難しい」という体感は、こういう数字の積み重ねから来ている。
個人の努力や意識の問題ではなく、構造の話だ。
そしてもう一つ、気になることがある。
男女賃金比は最高が83.8%(沖縄)、全国平均が76%台だ。
女性は男性の7〜8割の賃金しか受け取っていない。
これを「格差が縮まってきた」と言う人もいるが、私には違う見方をしてしまう。
7〜8割というのは、同じ時間・同じ場所で働いて、同じ成果を出しても、3割近く少ない賃金を受け取り続けているということだ。
それが47都道府県すべてで続いている。
なぜこのヒートマップを作ったか
単純に「稼ぎが少ない」だけの問題ではない。
パートから正規に上がれない
育休を取ると評価が下がる
管理職になれない
年金が少ない
——賃金の格差は、老後の貧困にまで連鎖する。
自律神経を崩して鍼灸院に来る女性の多くは、そういう構造の中で「頑張りすぎている」人だ。
その背景にあるものをデータで見せたくて、このヒートマップを作った。
数字は冷たいようで、誠実だと思う。
感情を差し挟まず、ただそこにある。その代わり、数字が見えていないものを言葉で補うのが、私がブログを書く理由だ。
今後の展望
今回可視化したのは、令和7年・フルタイム一般労働者の「平均月収」と「男女賃金比」の2指標。
見えてきたことを整理すると:
- 月収が高い都市と格差が小さい地域は一致しない。「稼げる」と「平等」は別の問題
- 製造業が強い地域ほど男女賃金格差が大きい傾向。産業構造と性別役割分業の問題
- このデータはフルタイム労働者の平均値であり、パートタイムを含めると実態はより厳しい
- 数値は平均値のため、高収入層が多い都市部は実態より高めに出る可能性がある
今後は、年齢階級別・産業別のデータも重ねて分析していきたいと思っている。「40代女性の賃金はどの産業で特に低いか」「正規・非正規で格差はどう違うか」——データを掘れば掘るほど、見えるものがある。
データの入口として、このヒートマップが使えるものになっていれば嬉しい。
社会が変わることを願いながら、生き延びる戦略も必要
日本の男女格差は、個人の努力だけで解決できる問題ではありません。
2025年の世界経済フォーラム(WEF)「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」では、日本は148か国中118位で、前年と同順位でした。
特に政治分野と経済分野の遅れが大きく、G7では最下位となっています。
またWEFは、現在のペースでは世界全体でジェンダーギャップを解消するまでに約123年かかると試算しています。地域によって進捗には大きな差があり、日本は政治・経済分野の改善の遅れから、さらに長い時間が必要になるとの指摘もあります。
課題としてよく挙げられるのは、
- 女性国会議員や閣僚の少なさ
- 管理職・経営層への女性登用の遅れ
- 出産・育児によるキャリア中断
- 長時間労働を前提とした働き方
などです。特に政治分野は日本の順位を大きく押し下げる要因となっています。
もちろん、こうした社会構造は変わっていくべきです。
私自身も、女性が性別によって不利益を受けない社会になってほしいと思っています。
けれど同時に、社会が変わるまでの数十年を待っている余裕はありません。
だから私は、
「社会をより良くするための声を上げること」と、
「個人として生き延びるための戦略を持つこと」
の両方が必要だと思っています。
副業を持つこと。
学び直しをすること。
資格を取得すること。
複数の収入源を育てること。
それは自己責任論ではなく、変化の遅い社会の中で自分自身を守るための知恵です。
社会の改善を願いながらも、自分の人生を誰かの改革任せにしない。
それが今の私の生存戦略かな。
参考データ・出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」都道府県別参考表(2026年3月公表) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/
- 対象:民間企業の一般労働者(フルタイム)。「きまって支給する現金給与額」(所定内給与+超過労働給与、税込、現物給与除く)
- 数値は平均値(加重平均)。中央値データは本調査では都道府県別に非公表
このブログでは、社会構造をデータで読み解く記事を不定期で書いています













