
第一段階の修了検定を受けた日の話
大人になってから、教習所みたいな
デッドラインのあるスクールに通うのは、正直しんどい。
期間は一応ある。
でも、仕事をしながらだと、
「時間を作る」という行為そのものが一仕事になる。
疲れている日もあるし、
今日はもう無理、という日も普通にある。
教習所でも、案の定つまずいた。
効果測定で落ちて、
地味に心が折れて、不貞腐れて。
そのタイミングで仕事が忙しくなって、
気づいたら、2〜3ヶ月、ほぼ放置していた。
行かなきゃ、とは思っている。
でも、間が空けば空くほど、
「忘れてそう」「怖そう」「また失敗しそう」が増えていく。
わかっているのに、動けない。
あの感じ。
そんなとき、口の悪い兄に言われた。
「間隔あけると、どんどん忘れるし
運転するの、もっと怖くなるよ」
「さっさと卒業しちゃいな」
言い方は相変わらず雑だったけど、
内容は、わりと正論だった。
今思えば、
あそこでお尻を叩いてもらったのは、
悪くなかったのかもしれない。
一回目の修了検定は、不合格。
屈折の最後、優先道路と合流するところで
左後輪が乗り上げた。
一瞬で終わり。
家に帰ると、兄はこう言った。
「国家試験受かったのにさ、
バカでも受かる試験で落ちるだなんて、プププ」
……はいはい。
二回目の検定の日。
送迎バスの運転手さんが
「今日は検定? 大丈夫だよ、ここまで来たんだから」
と、いつもの調子で声をかけてくれた。
教習所では、
たぶん偉い立場のおじさんが、
やけに温かい目でこちらを見ていた。
「不登校の子が久しぶりに学校に来たぞ……頑張れ……」
みたいな、あの眼差し。
検定中、S字。
入り口の左カーブで寄りすぎて、
また左後輪が乗り上げた。
一瞬、頭が真っ白になる。
でも今回は、
「バックして、直していこう」と言われた。
止まって、下がって、切り返して、
ちゃんと戻して、前に進んだ。
結果は、合格。
完璧じゃないけど、
途中でやめなかった。
家に帰ると、兄が
ミスタードーナツを買ってきてくれていた。
「合格したんでしょ」
……まあ、
ミスド買ってきてくれたので許す。
大人の挑戦は、
能力の問題というより、
時間と気力をどう確保するかの問題だったりする。
間が空くと、怖くなる。
怖くなると、遠ざかる。
でも、誰かに少し背中を押されて、
またハンドルを握れたなら、それでいい。
私は今、
運転の練習をしているようで、
たぶんやっているのは
「止まりかけたものを、もう一度動かす練習」だ。
次は学科試験です。ペーパーテスト。頑張ろう。














