
「女性は稼げない」とか「結婚したほうが安定する」とか、なんとなく空気としてある言説。でも実際どうなの? と思って、e-Statの就業構造基本調査(2022年)を引っ張ってきて、自分で分析してみました。
対象は全国の有業者。
未婚男性・既婚男性・未婚女性・既婚女性の4グループで、年齢階級ごとの年収中央値を推定したものです。
(中央値の推定方法:年収階級ごとの人数を累積して、50%を超える階級の代表値で近似しています)
令和4年就業構造基本調査(e-Stat)
年齢階級別・推定年収中央値
未婚男性/既婚男性/未婚女性/既婚女性(2022年・全国有業者)
年齢とともに
上昇し続ける
結婚・出産期に
年収が急低下
中央値は各年収階級の代表値(階級中央)で推定
この記事の目次
データで見る「結婚と年収」4グループの軌跡
既婚男性だけが、年齢とともに上がり続ける
4本の線の中で、年齢とともに一貫して右肩上がりなのは既婚男性だけです。20代前半では285万円だったのが、55〜59歳には422万円まで伸びる。
これ、「既婚男性のほうが優秀だから」じゃないと思っていて。
ケア労働を配偶者に外注できている構造が大きい。
転勤も残業も引き受けやすい。
管理職コースに乗りやすい。
キャリアが中断されない。
その積み重ねが、この右肩上がりを作っています。
既婚女性の年収は25歳を境に落ちていく
いちばん目を引くのが既婚女性の線の形。20〜24歳では188万円あるのに、25〜29歳で160万円、30〜34歳でさらに下がって151万円になる。
結婚・妊娠・出産のタイミングと完全に重なります。
その後40代で少し回復するけど、190万円台どまり。
これはパートや扶養内就労への移行を反映していて、103万・130万の壁(配偶者控除)という制度が、低年収帯に女性を集める構造になっているんですよね。
未婚どうしは、なぜ30代で止まるのか
「結婚していない=制約が少ない」はずなのに、未婚女性も未婚男性も、30代前半以降は年収がほぼ横ばいになります。
未婚女性が約280万円台、未婚男性が約320万円台でずっと推移する。
制度的な制約がなくても、昇進・昇給の機会が開かれていないという話で、女性管理職比率の低さや、「稼ぎ頭でなければ残業させにくい」という職場の論理が影響していると思います。
「男女差」より「婚姻差」のほうが大きかった
これ、個人的にいちばん刺さった視点。
55〜59歳で比べると:
- 既婚女性(185万)と未婚女性(276万)の差:約90万円
- 未婚男性(323万)と既婚男性(422万)の差:約100万円
つまり、結婚という選択が女性にとっては年収の低下要因に、男性にとっては上昇要因になっている。非対称すぎる。
これは能力の差じゃなくて、家事・育児・介護といったケア労働が市場で評価されず、女性側に集中して割り当てられてきた結果です。
おまけ:高収入女性の75%は未婚だった
これも同じデータで調べてみたんですが、逆でした。
令和4年就業構造基本調査(e-Stat)
高収入(500万円以上)女性の婚姻構成
年収帯ごとの既婚・未婚比率(2022年・全国有業者)
| 年収帯 | 合計人数 | 既婚% | 未婚% | 婚姻構成 |
|---|
中央値は各年収階級の代表値による推定値
500万円以上の高収入女性を見ると、既婚は約25〜26%、未婚が約74〜75%。高収入層の4人に3人は未婚女性です。
ただし1500万円以上になると既婚が40%まで上がってくる。この層は経営者・医師・弁護士などで、家事を外注できる経済力も持ちやすい。
「高収入かつ既婚でいられるのは、さらに高収入な層だけ」というのが実態に近いかもしれません。
今の社会では
- バリバリ働いて高収入を維持する
- 家事育児を多く担う
を同時にやるのが女性側にかなり重い。
だから結果として、
- 高収入を維持している女性には未婚が多くなりやすい
- 結婚後に収入を落とす女性も多い
という傾向が出る。
超高収入層になると、
- 家事代行
- ベビーシッター
- 外食
- 私立・保育サービス
- 時短ではない働き方
みたいに「ケアをお金で外注」しやすくなる。
だから、結婚・育児で女性のキャリアが削られにくくなる。
逆に中間層は、
一番「仕事も家事も両方やれ」が来やすい。
ここが統計にも出てる感じ。
データを見るたびに思うのは、「個人の選択」に見えることの多くが、実は制度と構造に誘導されているということ。
自分がどこに立っていて、何に影響されているかを知っておくことは、生存戦略を考えるうえで無駄じゃないと思っています。
この分析は就業構造基本調査をもとにした推定であり、個々人の事情や幸福度を示すものではありません。
また「結婚すると必ず年収が下がる」「未婚の方が良い」と結論づけるものでもありません。
ただし、婚姻・出産・ケア労働が女性の収入に大きく影響している可能性は、統計上も確認できます。
データ出典:令和4年就業構造基本調査(e-Stat)/中央値は各年収階級の代表値による推定値
※本記事について
本記事の着想および統計データの読み解き方は、教育社会学者・舞田敏彦氏の分析やグラフ表現から多くの影響を受けています。
私は統計の専門家ではありませんが、e-Stat(政府統計)を用いて自分なりにデータを整理し、「働くこと」「結婚」「生き方」について考える材料としてまとめました。
数値の解釈にはさまざまな見方があり得ます。本記事もひとつの視点として読んでいただければ幸いです。
参考にしている方
今回の分析やグラフ作成に興味を持ったきっかけは、教育社会学者の舞田敏彦先生です。
舞田敏彦(まいた・としひこ)
教育社会学者。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。
専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。
政府統計や公的データをもとに、教育・労働・格差・少子化などの社会問題を分かりやすく可視化・分析されています。
私自身、舞田先生のグラフや分析を読んで「統計って面白いかもしれない」と思うようになりました。
この『データで読む生存戦略』シリーズも、その影響を受けながら、e-Statなどの公的データを使って社会や働き方を考えてみる試みです。














